中村直史 15年1月18日放送

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japanesefilmarchive
はじまりの言葉/増村保造(ますむら やすぞう)

フェリーニやヴィスコンティに学び、
斬新な演出で戦後の日本映画に
新風をふきこんだ映画監督、増村保造。

日本的な情緒や雰囲気を嫌い
個人が発する「自我」を強烈に描きつづけた。

登場人物が強烈なら、演出方法も強烈。

死へと疾走する遊郭の女性を描いた「曾根崎心中」。
ヒロインの恋人役を演じた宇崎竜童に対する
撮影開始の合図は

「よーい、強く喘いで死ぬ気で、スタート!」

だったという。

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中村直史 15年1月18日放送

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serakatie
はじまりの言葉/リチャード・バック

何十年も生きてきて、
毎年、年の初めには、抱負のようなものも考える。

けれど、わからないのである。
一年一年、抱負が自分を成長させたのか。

むしろ、抱負負けして、
毎年どんどんダメになっているのではないか。

それでも、と「かもめのジョナサン」の作者
リチャード・バックは言います。

 やっぱり自分の歌をうたい続けることだと思うね。
 思いわずらい、駆けずり回りながらでも
 自分の歌だけはうたい続けるわけだ。

2015年、
あなたの歌を大きな音で聴きたいです。

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三島邦彦 15年1月18日放送

150118-03
santiagodn
はじまりの言葉 安田登(やすだのぼる)

新しい年のはじまりとともに、
何かを決意する人は多い。
しかし、そうした思いのほとんどは、
日常に押し流され、
どこか遠くへ消えていく。

能楽師、世阿弥が語った
「初心、忘るべからず」という言葉。
その意味について、
古代文字の研究者でもある能楽師、安田登はこう語る。

 初心の「初」の字は「衣」と「刀」です。
 着物をつくるときに、
 布地に最初にはさみを入れること、それが「初」です。
 着物をつくるときには、それがどんなに美しい生地であっても、
 そこにはさみを入れなければつくれない。

世阿弥が語った、初心。
その言葉にはもともと、
自らの過去に切れ目を入れ、変化を起こす強い心や、
過去と決別する、変化への切実な思いがこめられていた。

さあ、あらためて、
今年の初心はいかがですか。

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三島邦彦 15年1月18日放送

150118-04

はじまりの言葉 川上哲治

選手時代は「打撃の神様」と呼ばれ、
監督時代は9年連続日本一。
野球界に伝わる、
「名選手名監督にあらず」という言葉を覆した男、川上哲治。

その川上が引退後、野球解説者として初めて放送席に現れた。
偉大な人物を前に緊張するアナウンサーに向かって、
川上はこう言った。

 放送に関しては、僕が素人で君が先輩だから、
 びしびし指導してください。
 日本一の解説者になるつもりだから、どうぞよろしく。

その時、川上さんが選手としても監督としても
一流になった理由がわかった気がする、
と、アナウンサーは後に語った。

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三島邦彦 15年1月18日放送

150118-05

はじまりの言葉 ヘンリー・フィールディング

イギリス小説の父、
ヘンリー・フィールディング。
彼の作品の一つは、こんな書き出しではじまる。

 作家は自分を、内輪の、もしくは慈善のもてなしを行う紳士としてではなく、
 金さえ出せば誰でも歓迎される公的な食堂の経営者と見なすべきである。

読者を選ばないサービス精神。
イギリス小説の歴史は、
その決意からはじまった。

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三國菜恵 15年1月18日放送

150118-06
ネコ温泉
はじまりの言葉 宮崎駿

学校が始まった。会社が始まった。
ああ、面倒くさい。
そう思っているあなたへ。巨匠・宮崎駿のこんな言葉を。

 大事なことは、たいてい面倒くさい

お金を稼ぐことも、知恵を学ぶことも、人間には必要。
また来週も、がんばりましょうか。

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三國菜恵 15年1月18日放送

150118-08

はじまりの言葉 中原中也

詩人・中原中也。
19歳のときに経験した、ある喪失。

長年連れ添った彼女が、
自分の親友と関係を持っていたことがわかった。
中原は後ろ姿を見送り、ひとりで部屋へと戻ってくる。

 みなさん今夜は静かです
 薬鑵の音がしています

この日彼は恋人を失い、
はじめての孤独を手に入れた。
それは詩人にとって絶対的に必要なものだった。

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奥村広乃 15年1月17日放送

150117-01

近代地震学の父

近代地震学の父。
お雇い外国人のジョン・ミルン。
地質学・鉱山学の教授だった彼は、
日本の地震の多さに仰天し、研究を始める。

天井からつりさげた振り子。
地震が起きた時間を知らせる時計仕掛装置。
自宅はさまざまな装置にあふれた。

約1万円の私財を投じて地震計も作った。
当時の1万円は、現在の数千万円とも言われる。
ミルンの呼びかけにより、日本地震学会も創設され、
近代日本の地震研究に大きな影響を与えた。

ミルンは、学生たちにこう語っている。

「災害の厳しさが日本人の精神構造に
 どのような影響を及ぼしているか
 研究する必要があるのではないか」

まじめで、調和を大切にする日本人の心は、
地震や台風などの厳しさが生み出した。
そう考えた外国人が、かつていたのだ。

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礒部建多 15年1月17日放送

150117-02
risaikeda
地震とラジオ

地震大国日本において、
望まれるのは予知技術の発達。
その中で7〜8割近い的中率を誇るのが
新興技術研究所の熊谷卓らが開発した「逆ラジオ」だ。

20年前の今日、阪神・淡路大震災が発生。
震災後、相次いで報告されたのは、
発生直前の、ラジオからの大きなノイズ音だった。
そこに着眼した熊谷らは、
通常のラジオでは拾わないノイズを
積極的に拾う「逆ラジオ」を設計。
地震予兆が発するノイズを捉え、予知に貢献することが出来るのだ。
しかも大掛かりな仕掛けはいらず、
家庭でも簡単な装置で行うことが出来る。

まだ知られていないこの技術が、
さらに磨かれ、個人へと浸透していけば、
被害を0には出来ずとも、
最小限に食い止めることができる。
「逆ラジオ」は、その大きな役割を
果たしてくれるかもしれない。

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松岡康 15年1月17日放送

150117-03
Bujdosó Attila
焼け野原の建築

神戸市長田区にあるカトリックたかとり教会。
週末に住民が集まるホールは紙でできている。

阪神大震災で、教会はほぼ焼け落ちた。
焼け跡で青空ミサが開かれた日曜の朝、
建築家を名乗る男が、
「紙で教会を建てないか」と持ちかけた。
火事が頻繁に起きていた街に
紙で建てるなんてと神父は断った。

次の日曜も、その次の日曜も、
男は紙の建築の強さと施工の簡単さを説明した。
彼の名は坂茂(ばんしげる)。

その熱意に
「教会ではなく、住民が集まれるホールなら」と、
神父は承諾した。

高さ5mの紙でできた紙管58本を
長円形に配したホールは
「ペーパードーム」の愛称で
復興のシンボルになった。

トルコ、インド、
スリランカ、中国、イタリア。
地震や津波、洪水が起きると彼は現れ、
仮設の住宅や学校、ホールの建設をする。

2014年、坂茂は
建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞。
災害に立ち向かうその姿勢が
世界に認められたのだ。

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