小野麻利江 13年5月19日放送


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緑のはなし マーシャ・ブラウンが見た緑

 さわやかな みどりのはっぱのうえの
 ちいさなみどりの いもむし
 つめたいみどりのあしで
 はっぱのはじに ぶらさがる

アメリカの絵本作家 マーシャ・ブラウン。
道ばたに生える、なんでもない草の葉っぱですら。
彼女の目を通して見れば、
かけがえのない存在をいつくしむ
ひとかけらの、詩に変わる。

彼女は語る。

 みることのレンズは
 ちいさいものを おおきくみせる・・・

5月の新緑に、目をやる時。
あなたなら、そこに何を見つけるでしょうか。

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薄景子 13年5月19日放送


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緑のはなし 新川和江

言の葉と書いて言葉。
新緑の季節、木々の葉たちは
みずみずしい言葉を舞い落とす。

詩人、新川和江は
そんな一枚の葉を
自分にたとえてこう詠う。

 誰のまねでもない
 葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を
 せいいっぱい緑をかがやかせて
 うつくしく散る法を
 名づけられた葉なのだから 考えなければならない

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薄景子 13年5月19日放送


山の旅人
緑のはなし 光野桃

女性の人生哲学を描くエッセイスト、光野桃。
かつての座右の銘は「努力」。
1ヵ月に30本もの締め切りを抱える日々に、
心も体も疲れ果て、
すべての仕事を捨て、何の計画もないまま
夫のいるバーレーンへ旅立った。

そんな光野の再出発は、帰国後、
母親の介護をのりこえた後のこと。

介護疲れのリハビリを兼ねて行った山で、
木々の緑や空のありのままの美しさに気づかされる。
もう成長しなくてもいい。自分は自分のままでいいのだと。

以来、著書やイベントで
読者を森へといざなうようになった光野は言う。

 人生の目的は 誰かに認められることでも
 何かを生みだすことでもなく
 今この時を愛し慈しむということ。

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三島邦彦 13年5月18日放送



薔薇の季節 青いバラの研究者

英語のblue roseは「不可能」を意味する。
薔薇は青の色素を持たないので、
青い花を咲かせることはない。
ギリシア・ローマの時代から知られるこの常識を破ったのは、
日本の科学の力だった。
たずさわった研究者はこう語っていたという。

幸せを象徴する青い花を作って世の中を明るくしたい

努力が生んだ、青いバラ。
その花言葉は、「夢、かなう」。

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三島邦彦 13年5月18日放送



薔薇の季節 ウィリアム・モリス

モダンデザインの父、ウィリアム・モリス。
19世紀のイギリスで
書籍やカーテンなど日用品のデザインを洗練させ、
人々の生活における美意識を高めようとしたその活動は
アーツ・アンド・クラフツ運動と呼ばれ、
デザインの世界に革命的な影響を与えた。

モリスにとっての重要なモチーフ。
それは、植物。
草木の葉やツルをパターン化した彼のデザインは今も、
壁紙やテーブルクロスとして世界中の家のリビングを飾っている。

数ある植物の中で彼が特に愛した花、それは薔薇。
ある日、モリスの庭で育ててもらおうと
最新の品種改良をされた薔薇がモリスへ送られた時のこと。
薔薇を見るなりモリスはこう言った。

 全体の形でも細部でも、道端の茂みにある薔薇より美しい薔薇はない。
 どんな香りも、その芳香よりも甘くなく純粋ではない。

モリスのデザインが追い求めたもの。
それは、野に咲く薔薇のように自然なものだけが持つ
完璧な純粋さだった。

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三島邦彦 13年5月18日放送


Ako
薔薇の季節 北原白秋

日本文学の歴史において、花と言えば、桜と梅。
その歴史の中で薔薇は、ほとんど描かれることはなかった。

明治時代。
文明開化の世の中で、
歌人、北原白秋はこんな歌を詠んだ。

 目を開けて つくづく見れば 薔薇の木に 薔薇が真紅に 咲いてけるかも 

歌人が薔薇の花に美しさを感じた時、
世の中に、文学に、
新しい風が確かに吹き始めていた。

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三島邦彦 13年5月18日放送



薔薇の季節 シレジウス

17世紀のドイツ。
詩人のシレジウスは、
こんな一節を残した。

 薔薇はなぜという理由もなく咲いている。

 薔薇はただ咲くべく咲いている。

 薔薇は自分自身を気にしない。

 人が見ているかどうかも問題にしない。

数百年の時を経て、今年も薔薇が咲き誇る。
シレジウスの胸を打った時と変わらず、
あくまで自然に美しく。

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三國菜恵 13年5月18日放送



薔薇の季節 ベルギー・ヘックス城

ベルギー東南部にあるヘックス城。
そのお城の庭には、
「ヤクシマイバラ」という屋久島の固有種のバラが咲く。

大のバラ好きの主が取り寄せたらしいのだが、
誰によって運ばれたのかは謎のまま。

海の向こうで咲く屋久島のバラは、
この5・6月が見頃。
歴史の教科書には載らない国家交流の証が、今年も咲く。

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三國菜恵 13年5月18日放送



薔薇の季節 アントニウス

恋多き女性といわれたクレオパトラと
その恋人、アントニウス。
2人の恋物語にはバラの花が関係していた。

彼がクレオパトラの屋敷に行くと、
彼女はひざ上まで埋まるほどの
バラの花びらを敷きつめてお出迎え。

その幻想的かつ情熱的な演出に、
アントニウスはメロメロになる。
その効果はおそるべきもので、
彼のクレオパトラに対する想いは
最後の最期まで消えることがなかった。

アクティスの海戦で追い詰められ、自害するとき、
彼はこんな言葉を残して散る。

 私の墓をバラで覆ってください

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三國菜恵 13年5月18日放送


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薔薇の季節 平井かずみ

いまが見頃のバラの花。
花瓶に挿してたのしむのもよし、
湯船に浮かべてたのしむのも、素敵。

けれどももっとさりげなく、そして美しく、
バラをたのしむ方法があると
フラワースタイリスト・平井かずみは語る。

彼女のおすすめは、水を張った平たいお皿に、
花の部分だけを数本分、浮かべるというもの。
その美しさをこう語っている。

 外側からはがれ落ちてくる花びらを
 水面が支えてくれるのです。
 一枚、また一枚と水辺に漂う花びらがなくなるまで、
 感謝しながら見届けます。

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