2017 年 1 月 のアーカイブ

澁江俊一 17年1月15日放送

170115-06

天才絵師のトリック

今年、2017年は、酉年。

江戸時代に活躍した天才絵師、伊藤若冲。
彼は鶏をこよなく愛し、動植物をモチーフにした
作品集「動植綵絵(どうしょくさいえ)」シリーズ
全30点のうち、実に8点が鶏を描いたものである。

中でも「群鶏図」は圧巻。
13羽の鶏が絵の中でひしめきあい、あたかも
動き回っているような錯覚すら覚える。

実は、この錯覚を引き起こすために、若冲は
様々な仕掛けを意図的に施している。
せわしなく動き回る鶏たちを眺めながら、
次はどんな仕掛けで驚かせてやろうか、と
ほくそ笑む若冲の姿が眼に浮かぶようだ。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-07

国鳥になったワタリガラス

今年、2017年は、酉年。

ワタリガラスという鳥がいる。

世界各地の神話で、
人類を導く役割を担っていたワタリガラス。

このワタリガラスを
国鳥に定めている国がある。
かつてGNH=国民総幸福量という提案で
世界が注目した国、ブータンだ。

幸せという
数値化できない指標を使い
経済ですべてを理解しようとする世界を、
別の場所へ導こうとしているブータン。

その国王の冠には今も、
ワタリガラスの彫刻が飾られている。

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澁江俊一 17年1月15日放送

170115-08

飛翔への憧れ

今年、2017年は、酉年。

レオナルド・ダ・ヴィンチが残した
膨大な手稿の中に、36ページからなる
「鳥の飛翔に関する手稿」というメモがある。
そこには、鳥が飛翔するための力学構造についての
考察が詳細にまとめられている。
この先見性と挑戦心に満ちた手稿の裏表紙に、
ダ・ヴィンチはこう記している。

「巨大な鳥は、偉大なチェチェロ山の頂きから初飛行を行い、
 全世界を驚嘆の声で満たし、すべての書物をその名声で
 満たすであろう。」

その予言は現実となり、わたしたちは、空へ、そして
さらなる宇宙へと飛び立とうとしている。
鳥たちへの憧れを胸に。

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三國菜恵 17年1月14日放送

170114-05
Vincent_AF
ひとりとひとり 久世光彦と向田邦子

1960年代から80年代にかけて、
数々のヒットドラマをうみだした二人がいる。

演出家・久世光彦と
脚本家・向田邦子。
二人は何でも一緒につくった。
そして、よく電話を掛け合った。

久世は、大事な資料を無くした時に、
まず向田に電話を掛ける。

向田は、何かを思いついた時、
必ず久世に電話を掛ける。

久世は、向田が遅刻する時、
言い訳のバリエーションが少ないことを知っていた。

向田は、乳がんが見つかった時の不安を、
電話先の沈黙で久世に伝えた。

替えのきかないその関係を、久世はこんな言葉で表している。

 もし、あなたのまわりに、長いこと親しくしているくせに、
 指一本触ったことがない人がいたら、
 その人を大切にしなさい

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中村直史 17年1月14日放送

170114-01
sympathy
ひとりとひとり 宮本常一と渋沢敬三

旅する巨人と言われた民俗学者、宮本常一(みやもと つねいち)。
彼を偉大な民俗学者にしたのは、
才能と努力だけではなかった。

「パトロン」がいた。

渋沢敬三(しぶさわけいぞう)。
第16代日本銀行総裁。のちの大蔵大臣。
日本の辺境に残る文化をつぶさに記録した宮本を、導き、援助しつづけた。

渋沢は、日本の経済の中心にいながら、
つねに日本の「すみずみ」のことを考えていた。
その思いを、宮本常一に託したのかもしれない。
渋沢のこんな言葉が残っている。

 舞台で主役をつとめていると、多くのものを見落としてしまう。
 その見落とされたものの中にこそ大切なものがある。
 それを見つけてゆくことだ。
 人の喜びを自分が本当に喜べるようになることだ。

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三島邦彦 17年1月14日放送

170114-02
The Dayton/Montgomery County CVB
ひとりとひとり 大森荘蔵と坂本龍一

哲学者・大森荘蔵。
日常の言葉で自らの哲学を語る彼には
一般の読者も多かった。
音楽家の坂本龍一もまた、
そんな大森哲学の愛読者の一人だった。

 哲学とは理解するものと思っていたのが、
 芸術を楽しむように享受することもできるのを
 知らしめていただいた大森先生に感謝。

そう語る坂本は、ある日、
大森から直接哲学講義を受ける機会を得る。

坂本龍一の専門である「音」を巡りふたりは対話する。
大森は語る。

音は生まれた時に消えている。

 時計のコチコチはまさに過ぎゆく時の足音であり、
 音は時の流れる響きなのである。

時間とは何か、音とは何か。
大森の考察を、坂本の実感が裏付けていく。
哲学する音楽家と芸術的な哲学者が
対話を通じて響き合った。

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三島邦彦 17年1月14日放送

170114-03

ひとりとひとり 小津安二郎と原節子

世界最古の映画協会、
英国映画協会は10年に一度、
「映画監督が選ぶベスト映画」を発表している。
最新のランキングで1位に選ばれたのが、
小津安二郎監督の「東京物語」。

その「東京物語」に加え、
「晩春」「秋刀魚の味」など、
小津の代表作で主演を演じたのが
女優・原節子。

役者への厳しい演技指導で知られる小津だが、
原節子に対しては賛辞を惜しまなかった。

映画が人間を描く以上、
 知性とか教養とかいうものも現れてこなければならない、
 実際、お世辞ぬきにして、
 日本の映画女優としては最高だと私は思っている。

名監督と大女優との強い絆が、
映画史に残る傑作を支えた。

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三國菜恵 17年1月14日放送

170114-04

ひとりとひとり 坂本龍一とNIGO

テレビの中で、雑誌の中で、
「この人、なんかいいな」と感じる人がいる。
そう思うのは芸能人同士であっても同じである。

作曲家・坂本龍一はある人のことが気になっていた。
アパレルブランド、A BATHING APEの
クリエイティブディレクターして知られるNIGO。

坂本は自身のトークショーのゲストにNIGOを招いた。
ほぼ初対面だったけれど、ある話題をきっかけに、
ふたりの会話の距離はぐっと縮まる。

 子どものころ、家に百科事典があって、
 読んではいないけれどあの存在感が好きだった

狭いツボを共有できて「やっぱり」と思った坂本は、
そのあとすぐ、連絡先を教えてと言った。

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佐藤日登美 17年1月8日放送

170107-01
Dave Sizer
おとな 鈴木一朗の卒業文集

おとなになったら、なりたいもの。
小学六年の卒業文集に、こう書いた少年がいる。

 僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。
 (中略)
 三年生の時から今までは三百六十五日中三百六十日は激しい練習をやっています。

その少年は、鈴木一朗。
今メジャーリーグで活躍しているイチロー選手である。

その文集からは、イチロー選手が小学生のときから
状況を正しく分析し、
しっかりと目標を定め、
誰よりも努力していたことが伺える。
それは、おとなになった今も変わらない。

2016年、イチローは日米通算4300安打の記録を打ち立てた。

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佐藤日登美 17年1月8日放送

170107-02
aaron_anderer
おとな 安心とは

漫画「スヌーピー」のなかで、
主人公のチャーリーブラウンと、
その友だち、ペパーミント・パティが大きな木の下で話している。

テーマは、「安心」。

小学生にしてはなかなか大きなテーマだが、
チャーリーブラウンはこう答える。

 安心っていうのは、
 車の後部座席に寝ているときのことだよ。
 君は子どもで、お父さんとお母さんは前の席に座っていて、
 心配することはなんにもない。

けれど、そのすてきな答えが気に入ったペパーミント・パティに対して
チャーリーブラウンはこう続ける。

 でもそんなのはずっと続かない!
 君は突然おとなになって、そしたら
 もう二度と車の後部座席でなんか寝れなくなっちゃうんだ!

おとなって、なんだかちょっと窮屈そう。
哲学的な回答をするチャーリーブラウンも、
本当のおとなになるのはもう少し先のようです。

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